那珂川の水が那須野が原を潤す疏水
那須疏水は、栃木県那須塩原市の那珂川から水を引き、那須野が原の農地と暮らしを支えた歴史的な水路です。那須塩原市によると、1885(明治18)年9月15日に西岩崎から千本松へ至る本幹水路16.3kmが完成しました。その後4本の分水路が開かれ、開拓地に水を行き渡らせました。現在も農業用水だけでなく、那須塩原市の水道事業が那須疏水経由の原水を利用しています。旧取水施設の文化財価値と現役の水路網を区別して紹介します。[1][6][10]
1882年の飲用水路が先行し、1885年に本幹水路が完成
水源に乏しい扇状地で暮らしの水を確保するため、1882(明治15)年には那須原飲用水路が開通しました。1885年4月15日、烏ヶ森の丘で疏水開削起工式が行われ、同年9月15日に本幹水路が完成。関東農政局は幹線を「約16km」、1886年に完成した4本の分水路を約59kmと説明しています。16.3kmは那須塩原市による当初の本幹水路の記録で、現在の全水路網の延長でも、旧取水施設の導水路単体の延長でもありません。[1][6]
那珂川の洪水に応じた取入口の移設
那須疏水最初の取入口は1885年に那珂川沿いの崖に隧道を掘って造られました。流量調節設備が十分ではなく、大水や土砂の影響で使えなくなることがあり、1905年には約200m上流に第二次取入口を設置。1915年に元の位置へ戻し、1928年には水量調節設備とアーチ型の石積みが加えられました。これらは同じ場所で単一構造物が変化し続けたのではなく、取入口と関連設備の変遷です。[2][4][5]
1905年の導水路・余水路と東西隧道
文化庁と農林水産省によれば、那須疏水旧取水施設は1885年・1905年の隧道坑門を利用した東水門・西水門、および1905年に整備された導水路・余水路からなります。農林水産省の土木遺産解説には、1905年の第二次取水口導水路を174間、うち隧道部分を87間7分と記録します。これらは第二次取水施設に関する歴史的規格であり、疏水の全線延長や現行の地下導水路寸法に流用しません。[3][4][5]
1970年代の西岩崎頭首工が現在の取水を担う
1967年から国営那須野原総合農地開発事業が進み、幹線水路・分水路の改修と取入口更新が行われました。那須野ヶ原土地改良区連合は可動堰・取水口を1974年、固定堰・取付水路を1975年の施工と記し、那須塩原市は第四次取入口を1976年に新設したと説明します。工事対象・完成段階の記述差として分け、単一の完成日にはまとめません。これにより古い東西水門等は取水の主役から退き、歴史的遺構として残っています。[2][6][7]
西岩崎頭首工の計画取水量と水道への分岐
那須野ヶ原土地改良区連合の施設資料は、西岩崎頭首工を那珂川に築かれた取水施設とし、堤長89m、計画取水量8.93m³/秒(農業用水8.64m³/秒、上水道0.29m³/秒)を掲げます。この数値は現行頭首工の計画値であり、旧取水施設の流量、那須疏水全線の実通水量、千本松浄水場の個別施設能力を示しません。水路の分水管理や水道用の別途取水は、各管理主体の区分に従って理解する必要があります。[7]
千本松浄水場などが疏水経由の原水を利用
那須塩原市が公開した水道事業審議会資料では、市の水道水の原水の一部を那珂川から那須疏水経由で取り入れ、千本松浄水場への取水口は疏水にあると明示しています。鳥野目浄水場への導水路の取水施設も同資料に示されています。千本松浄水場は取り入れた原水を浄水処理する施設であり、那須疏水自体で水道水が完成するのではありません。農業用の本幹・分水路、旧取水遺構、浄水場の処理設備を別施設として説明します。[10]
水質管理と施設固有の指標を分ける
那須塩原市の令和8(2026)年度水質検査計画付表は、千本松浄水場を原水と浄水の検査地点に挙げています。原水ではpH値・濁度・色度などを測定し、浄水や末端では消毒残留効果などを検査します。水質検査結果は浄水場系統の採水地点・年度に結び付く値であり、1885年の取入口や旧隧道、農業用水路全体の水質にそのまま帰属させません。[10][11]
2006年の国重要文化財指定と2017年の追加指定
那須塩原市と文化庁は、2006年7月5日に旧取水施設の東水門・西水門・導水路・余水路などが国の重要文化財に指定されたと記録しています。2017年2月23日には東隧道・西隧道、および関連する歴史図面などが追加指定されました。別に那須疏水自体は2017年に世界かんがい施設遺産へ登録されています。国重要文化財の指定対象を、改修済みの現行幹線・全分水路や西岩崎頭首工の全体にまで拡大解釈しません。[2][3][4][6][12]
那須疏水公園からの見学と管理区域
那須疏水旧取水施設の周辺には那須塩原市が管理する那須疏水公園があり、土地改良区連合は公園側から旧取入口と現在の西岩崎頭首工を見学できると案内しています。公園の利用には許可不要ですが、2021年度以降は栃木県管理の頭首工施設側からの見学を原則受け入れない方針です。学校等の団体には事前の施設見学届提出への協力を求めています。公園の屋外見学は東西隧道内部や水門の管理区域へ自由に立ち入れることを意味しません。冬季の公園トイレ休止や自然環境への注意事項も事前に確認してください。なお那須塩原市は、現行の幹線水路沿いに「那須疏水探訪の小径」を案内し、沿線の3種類の水力発電施設も紹介しています。旧取水施設の公園とは区別される散策路です。[2][8][9][13]
Deep research
那須塩原市・文化庁・農林水産省の旧取水施設指定記録と、那須野ヶ原土地改良区連合の現行取水・公園利用案内、那須塩原市の水道審議会資料と2026年度水質検査計画を照合。1882年の先行飲用水路、1885年の疏水完成、1905年の旧導水路、1970年代の現頭首工を明確に分離する。
最終確認:2026-11-04
施設データを詳しく見る
- 先行する飲用水路
- 1882年開通
- 那須疏水本幹水路完成
- 1885年9月15日
- 完成時の本幹水路
- 16.3km
- 1886年の分水路
- 4本・約59km
- 第二次取入口の導水路
- 174間
- 現行の取水施設
- 西岩崎頭首工
- 現頭首工の計画取水量
- 8.93m³/秒
- 現頭首工の堤長
- 89m
- 国重要文化財指定
- 2006年7月5日
- 世界かんがい施設遺産
- 2017年登録
那須原飲用水路。1885年完成の本幹水路とは別の沿革
那須塩原市が示す西岩崎~千本松区間
明治期の本幹。現在の全水路延長ではない
関東農政局の歴史資料。現在の分水路総数ではない
1905年当時の記録。うち87間7分が隧道区間
1970年代に更新。旧東西水門は原水取入口として非使用
農業用8.64・上水道0.29m³/秒。実績流量ではない
現行西岩崎頭首工の仕様。旧取水施設の寸法ではない
旧東西水門・導水路・余水路など。東西隧道等は2017年2月23日追加
那須疏水の歴史的かんがい施設としての登録
那珂川から疏水・水道原水へ
- 1
那珂川の河川水
那須塩原市の西岩崎付近で取水する河川水。歴史上の取入口は複数回移設された。
- 2
西岩崎頭首工から取水
現在稼働する第四次取入口。東西水門・旧導水路は現行の主要取水設備ではない。
- 3
那須疏水の幹線水路
水が那須野が原へ運ばれる。1885年の16.3kmは創設時の本幹の長さ。
- 4
分水路で農業用水を配分
幹線から分水し、農地等へ水を届ける。現行の運用は土地改良区等が担う。
- 5
疏水から水道原水を取水
千本松浄水場などの原水も那須疏水を介して取り入れる。かんがいと別用途の分岐である。
- 6
浄水場で処理・検査
原水を浄水場で処理し、水質検査で管理する。旧取水施設そのものは浄水設備ではない。
- 7
各給水区域へ供給
浄水後の水道水が市内の配水施設等を経て利用者に届く。疏水内の水は未処理原水である。
飲用水路・疏水・旧取入口・現取入口の年表
那須原飲用水路が開通
農地開拓前に飲用水の不足を補う先行水路が設けられる。
那須疏水開削の起工式
那須塩原市が烏ヶ森の丘での起工式を記録。
本幹水路16.3kmが完成
西岩崎から千本松まで。現在の全線延長とは別。
4本の分水路を整備
関東農政局による歴史的延長は約59km。
第二次取入口・導水路・余水路へ改修
旧取入口から約200m上流に移し、第二次取入口の導水路を整備。
第三次取入口として旧位置に戻る
河道の変動に対応した移設。
第三次取入口の水量調節設備を整備
石積みのアーチや鉄扉操作設備などを増設。
那須野原総合開発事業に着手
老朽化した取水・幹線施設の更新計画が進む。
西岩崎頭首工へ取水機能を移す
土地改良区連合の施工年1974~75年と市の第四次取入口新設年1976年を区別。
旧取水施設が国重要文化財に指定
東水門・西水門・導水路・余水路など。
東西隧道と資料等を追加指定
既存の重要文化財の指定対象が拡充。
世界かんがい施設遺産に登録
国重要文化財とは異なる制度・登録対象。
見学・アクセス情報
那須疏水公園は一般に自由見学できる公開空間ですが、西岩崎頭首工の栃木県管理区域や旧隧道・水門内部は別の管理対象です。公園からの外観観察を基本とします。
- 旧取水施設
- 栃木県那須塩原市西岩崎地内・那須疏水公園
- 那須疏水公園
- 土地改良区連合の案内では許可不要で自由見学できる
- 観察できる施設
- 公園側から第1~第3取入口、旧水門、現頭首工の外観など
- 現頭首工施設側
- 2021年度から原則見学を受け入れない。公園側の見学と区別
- 旧隧道内部
- 一般の自由立入案内は確認できない
- 学校・団体
- 公園側見学は許可不要だが、施設見学届の事前提出に協力するよう案内
- 現地の注意
- ハチ・クマ・毒ヘビなどに注意。公園トイレは12~4月に閉鎖される案内あり
見学目的でも門・柵・管理区域を越えず、管理者が案内する公開条件と指定経路に従ってください。
那須疏水を経由する水道原水の検査
那須塩原市の水道事業審議会資料は、千本松浄水場の原水が那須疏水経由で取り入れられると示しています。2026年度水質検査計画付表には千本松浄水場の原水・浄水と末端検査地点が別々に示されます。これは飲用のため処理される水道原水・浄水に対する検査で、1885年の旧取入口や現行の農業用水路全体を直接測った数値ではありません。西岩崎頭首工の8.93m³/秒も取水計画値で、水質値や通水実績ではありません。[7][10][11]
よくある質問
那須疏水は何のために造られたのですか?
那珂川から那須野が原へ水を引き、開拓地の飲用・農業用水を確保するためです。現在も水道原水の取水に利用されています。
いつ完成しましたか?
那須原飲用水路は1882年開通、那須疏水の本幹水路16.3kmは1885年9月15日完成です。
那須疏水は全長16.3kmですか?
16.3kmは1885年の本幹水路の長さです。翌年には分水路が開かれ、現在の水路網の総延長とは異なります。
旧取水施設と現在の西岩崎頭首工は同じですか?
いいえ。旧東西水門などは歴史的遺構として残り、1970年代以降の主要取水は更新された西岩崎頭首工が担います。
旧取水施設は何が重要文化財になっていますか?
2006年には東水門・西水門・導水路・余水路など、2017年には東隧道・西隧道や関連史料などが追加指定されました。
1905年の導水路の長さは?
農林水産省の解説では第二次取水口導水路174間、うち87間7分が隧道と記録しています。那須疏水全線の長さではありません。
那須疏水の水を飲むことはできますか?
疏水内の水は未処理の原水です。千本松浄水場などに取り入れられた後、浄水・消毒を経て水道水として供給されます。
西岩崎頭首工の計画取水量はいくらですか?
土地改良区連合は計画取水量を8.93m³/秒(農業用8.64、上水道0.29)と記載しています。実際の年間取水量ではありません。
那須疏水公園は予約なしで見学できますか?
土地改良区連合は公園側の自由見学は許可不要と案内しています。学校等の団体には事前の見学届への協力を求めています。
旧水門や隧道の内部に入れますか?
公園からの外観観察と施設内部への立入は別です。現頭首工の施設側見学は原則不可で、旧隧道内部の自由立入も確認できません。
那須疏水(旧取水施設・導水路)を理解するための要点
本ページでは、那須疏水(旧取水施設・導水路)を栃木県・那須塩原市の疏水施設として記録しています。以下は掲載資料から確認できる基本情報です。
- 記録上の所在地
- 旧取水施設:栃木県那須塩原市西岩崎地内(那須疏水公園)。疏水の幹線・分水路は那須野が原に広がり単一の番地ではない
- 施設種別
- 疏水施設
- 年代・供用状況
- 那須疏水本幹水路は1885年9月15日完成。前身の那須原飲用水路は1882年開通、旧取入口は1885年以降に改変
- 構造・形式
- 那珂川の取水施設、幹線・分水路。国重要文化財「那須疏水旧取水施設」は東水門・西水門・導水路・余水路と東隧道・西隧道などの歴史的遺構
- 能力・規模
- 1885年当初の本幹水路16.3km(現行路線の全長ではない)。現行の西岩崎頭首工の計画取水量は8.93m³/秒(農業用8.64・上水道0.29。疏水全体の実績量ではない)
- 文化財等
- 国重要文化財「那須疏水旧取水施設」(2006年7月5日指定、2017年2月23日東西隧道等を追加)。那須疏水は2017年世界かんがい施設遺産登録。全水路が重要文化財という意味ではない
施設の機能と地域での役割
水路・隧道・水路橋などは、水を運ぶ経路や関連設備です。用途は施設によって異なるため、上水道だけに限定せず、送水先や地域での役割を本文で確認してください。 この一般的な役割と、上記の調査本文に記載したこの施設固有の歴史・構造を分けてご覧ください。
見学・現地確認について
掲載上の見学情報は「那須疏水公園は許可不要で見学可能。旧取入口・現頭首工は公園側から観察。頭首工の施設側は2021年度から原則見学不可、旧隧道内部などの自由立入は認められない」です。公開日、受付方法、見学可能範囲は変更されることがあります。訪問前に管理者や自治体の最新案内を確認し、現地では指定された見学経路に従ってください。
掲載内容はページ末尾の出典・参考資料13件を基に整理しています。資料間で表記が異なる場合は、自治体・管理者の案内を優先してください。
所在地マップ
旧取水施設:栃木県那須塩原市西岩崎地内(那須疏水公園)。疏水の幹線・分水路は那須野が原に広がり単一の番地ではない
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出典・参考資料
- 1那須塩原市「那須野が原の開拓の歴史」(1882年の飲用水路・1885年9月15日の本幹16.3km完成・分水路)↗本文に戻る ↑
- 2那須塩原市「那須疏水旧取水施設」(東西水門・隧道・取水口変更・2006年指定・2017年追加指定)↗本文に戻る ↑
- 3文化庁「国指定文化財等データベース 那須疏水旧取水施設 東水門」(指定対象と2006年7月5日指定)↗本文に戻る ↑
- 4農林水産省「那須疏水旧取水施設東水門等」(水門・1905年導水路・余水路の文化財価値、公園整備)↗本文に戻る ↑
- 5農林水産省「九州の石工の遺跡 那須疏水旧取入口」(1885年取入口・1905年第二次取入口の174間、うち隧道87間7分)↗本文に戻る ↑
- 6関東農政局「地域の水利資産」(1885年幹線約16km・1886年分水約59km・1967年国営事業・2017年世界かんがい施設遺産)↗本文に戻る ↑
- 7那須野ヶ原土地改良区連合「水利施設 西岩崎頭首工」(現役堰の堤長89m・計画取水量8.93m³/秒の内訳・工事史)↗本文に戻る ↑
- 8那須野ヶ原土地改良区連合「西岩崎頭首工 施設見学」(旧取入口・那須疏水公園・現頭首工の見学範囲)↗本文に戻る ↑
- 9那須野ヶ原土地改良区連合「施設見学のお申込み」(公園側の自由見学・頭首工施設側の立入制限)↗本文に戻る ↑
- 10那須塩原市「第2回水道事業審議会 資料2」(那須疏水経由の那珂川原水、千本松浄水場・鳥野目浄水場の取水)↗本文に戻る ↑
- 11那須塩原市「令和8年度水質検査計画 付表」(千本松浄水場の原水・浄水の検査地点と検査項目)↗本文に戻る ↑
- 12那須野ヶ原土地改良区連合「那須疏水 世界かんがい施設遺産登録記念」(工事・改修履歴と登録年表)↗本文に戻る ↑
- 13那須塩原市「那須疏水探訪の小径」(現行幹線沿いの散策・小水力発電設備)↗本文に戻る ↑
年代・出典の扱いと現役施設を確認するときの注意はアーカイブの読み方・見学ガイドにまとめています。