建設の背景
唐津市は佐賀県北部の玄界灘に面した港湾・観光都市で、唐津城と鏡山を中心に市街地が形成されてきた。鏡山(標高284メートル)の山麓に広がる市街地南部は、平地の北部市街地に比べて標高差があるため、配水圧の安定確保が水道整備の課題であった。1933年(昭和8年)、唐津市水道課が鏡山麓の高台に配水塔を建設し、南部市街地への均等な給水圧を確保する重力配水システムを完成させた。
建築的特徴
RC造の円筒形塔体で、塔高約10メートル。昭和初期の九州地方における中型配水塔の標準的な設計仕様に準じており、外壁の縦スリット状点検口・頂部通気ハッチ・螺旋状保守梯子などが当初の構成要素を概ね伝えている。戦後の改修により開口部の意匠が一部変更されているが、塔体の基本形状は竣工当時を維持している。基礎部はフーチング形式で、鏡山山麓の傾斜地地盤への対応が施されている。
近代水道の整備と唐津の産業史
唐津市は明治期に炭鉱産業の集積地となった背景を持ち、近代水道の需要は炭鉱労働者の衛生環境改善という側面も有していた。昭和初期の水道整備は市街地の衛生状態改善を主眼としており、本配水塔はその整備の集大成として建設された。現在は唐津市の近代産業・インフラ史を紹介するコンテクストでも言及されている。
現況
現在も塔体が現存しており、周辺の整備とともに解説板が設置されている。解説板には建設の経緯と近代水道の意義が記載されており、見学者が施設の歴史的背景を理解できる体制が整っている。
出典・参考資料
- 1唐津市水道局『唐津市水道史』(1983年)
- 2佐賀県『佐賀県水道史』(1995年)
- 3日本水道協会「近代水道遺産データベース」↗
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