建設の背景
有田町は佐賀県西松浦郡に位置し、江戸時代初期から続く有田焼(磁器)の産地として世界的に知られる。磁器製造には大量の清水が不可欠であり、近代水道の整備は生活用水の確保と同時に産業用水(磁器成型・染付・釉薬調合用)の安定供給という産業的意義を持っていた。1958年(昭和33年)、有田町水道組合が産業用水と生活水道の双方に対応する給水塔を建設し、有田焼産業の高度成長期における水需要増加に対応した。
建築的特徴
RC造の円筒形給水塔で、昭和30年代の標準的な中型給水塔の設計仕様に準じた構成であった。有田の陶磁器産業特有の需要として、精製清水の給水圧確保と水質安定性が重視されており、配管系統の材料選定に塩素耐性・鉄分溶出抑制の観点が加味されていた記録がある。建設は佐賀県内の建設業者が担当し、有田の地域建設業の技術力を活かした施工であったとされる。
老朽化と解体
2000年代の耐震診断で構造評価の見直しが行われ、配水系統の統廃合と合わせて廃止が決定した。2016年(平成28年)に本体が解体撤去された。解体前に有田異業組合が写真記録・関係者聞き取りを実施しており、その成果は有田焼産業史の一部として保存されている。
有田焼産業と水道の関係
有田焼の生産プロセスにおける水の役割は一般に知られていないが、素地の精製・成型、染付絵具の調合、焼成後の製品洗浄など複数の工程で大量の清水が使用される。本給水塔は産業遺産としての側面を持つ水道施設であり、有田焼の近代化・産業化を支えたインフラとして再評価される余地がある。
出典・参考資料
- 1有田町史編集委員会『有田町史』(2006年)
- 2佐賀県『佐賀県水道史』(1995年)
- 3日本水道協会「近代水道遺産データベース」↗
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