疏水施設現存2016年4月に猪苗代湖安積疏水安積開拓の物語が日本遺産認定、同年11月に安積疏水が世界かんがい施設遺産登録。麓山の飛瀑の文化財登録は別の指定

安積疏水

1882年完成、猪苗代湖から安積原野に水を引く農業・発電・都市用水の多目的疏水

安積疏水は、明治政府が猪苗代湖から郡山の安積原野へ水を引くため1879年に着工し、1882年に完成した国直轄の農業水利事業による疏水。完成時の幹線52km・分水路78kmという記録があり、水田の開拓を支えた。水力発電や都市用水にも発展し、現在も上戸頭首工から新安積幹線用水路を経る系統が郡山市の堀口浄水場の原水に使われる。歴史的な水路延長と現代の改修路線、農業取水量と水道取水量は区別する。

年代・現況1879年着工、1882年8月完成(農林水産省)。東北農政局が記す通水式は1882年10月1日
所在地郡山市・須賀川市・本宮市ほか(取水側は猪苗代町)
構造・形式頭首工・開水路・分水路・隧道・水門を含む水路網。当初は幹線52km・分水路78km、郡山市資料には37隧道
見学麓山の飛瀑などの紹介地点と、上戸頭首工・…

猪苗代湖から安積原野へ水を運ぶ多目的疏水

安積疏水は、猪苗代湖から福島県郡山市周辺の安積原野へ水を導くため、明治政府が開削した農業水利施設です。主用途は農地へのかんがいですが、後に水力発電・産業用水・都市用水にも活用されました。郡山市の現行水質年報も、上戸頭首工から新安積幹線用水路を通る原水が堀口浄水場に入る系統を記録しています。したがって水道に関係する疏水として紹介しますが、安積疏水全体を上水道専用導水路とは扱いません。[1][2][9]

1879年着工、1882年に幹線・分水路が完成

農林水産省によると1879(明治12)年に工事が始まり、オランダ人技術者ファン・ドールンの調査を経て約3年で完成しました。延べ85万人が工事に従事し、当時の工費は40万7千円。1882(明治15)年8月に幹線52km、分水路78kmの水路が完成し、新たに約3,000haの水田が造成されたと記録します。東北農政局の説明は1879年10月27日着工、1882年10月1日に通水式を挙行と記しており、8月の完成記録と10月の通水式記録を別々の出来事として扱います。[1][2]

創設時の水路延長は公式資料でも数値が異なる

農林水産省の歴史紹介は幹線52kmと分水路78km、合計130kmという内訳を示します。一方、同省の世界かんがい施設遺産紹介PDFは当初の建設水路を127kmと記します。集計対象や定義の差を裏付ける注記は確認できないため、両値を併記します。また、郡山市の解説には当初の隧道37か所という記録がありますが、これは現在供用中の隧道数を意味しません。[1][3][4]

十六橋水門と、山潟から上戸頭首工への取水口変更

猪苗代湖から水を得るための重要設備として十六橋水門が造られ、湖の水位と疏水への取水を支えました。1882年当初の取水口は山潟取水口で、現在の上戸頭首工より約500m東にありました。福島県土地改良事業団体連合会によると、湖面低下による自然取水の困難さや田子沼付近の地盤条件を踏まえ、戦後の国営新安積開拓建設事業で現在の上戸頭首工が整備され、用水路が北側の山中地下へ移されました。現在の取水口を1882年当初の構造物と同一視しません。[4][5][10]

上戸頭首工から田子沼分水工、かんがい地区へ

現在の上戸頭首工は猪苗代湖水を取り入れ、取水位調節とごみ・砂への対応を行う施設です。福島県土地改良事業団体連合会は最大送水可能量を毎秒約15トンとし、田子沼地点で安積疏水・五百川地区と新安積地区へ水が分かれると説明します。この値は頭首工での取水設備能力であり、全水路の設計流量でも年間配水実績でもありません。[5]

国営事業による増改修。事業規模と全水路規模は別

農林水産省は1941~1966年度の国営新安積土地改良事業と、1970~1982年度の国営安積疏水土地改良事業によって増改修・延伸したと説明しています。後者について東北農政局は受益面積7,829ha、調整池1か所、頭首工7か所、導水路1条1.2km、取水路1条3.8km、用水路4条39.3kmと記載します。これらは1970~1982年度の事業範囲の数量であり、安積疏水全線の延長・現行設備総数とは異なります。農林水産省の紹介にある水田約9,570haも、その資料の説明対象となる受益面積であって2026年度の実測値と断定しません。[1][6]

1912年の近代水道と、現在の堀口浄水場への接続

郡山市の水道史では、1907(明治40)年に多田野湧水と安積疏水の分流を水源とする水道案が可決され、1912年3月に豊田浄水場が完成、同年4月に給水が始まりました。これは歴史上の利用です。現在については郡山市上下水道局の令和6年度水質年報が、堀口浄水場の猪苗代湖水を、浜路取水塔から専用トンネル・導水管で入る浜路原水と、上戸頭首工から新安積幹線用水路で入る上戸原水に分けて説明しています。浜路専用導水路を安積疏水の全線と混同しません。[7][9]

2024年度の水道取水量と水質検査の読み方

郡山市「2026年度版 上下水道のしおり」の水源別取水量表では、令和6(2024)年度の猪苗代湖・上戸系の水道取水量は1,447,460m³、郡山市水道の総取水量の3.7%です。浜路系は28,405,660m³・72.0%で別計上されています。これは郡山市水道事業における水源別取水実績で、安積疏水の農業用を含む全水量ではありません。水質年報が分析する上戸原水の水質を、明治期の疏水全体の水質やすべての末端用水路の値として転記しません。[8][9]

日本遺産・世界かんがい施設遺産と現地見学

2016年4月には猪苗代湖・安積疏水・安積開拓をつなぐ「一本の水路」のストーリーが日本遺産に認定され、同年11月に安積疏水が世界かんがい施設遺産に登録されました。郡山市が紹介する麓山の飛瀑は、安積疏水を記念する歴史的施設ですが、その文化財登録を安積疏水全体の国重要文化財指定と混同しません。紹介・散策可能な場所があっても、上戸頭首工・十六橋水門や管理用地下水路の内部を常時自由に見学できるという公式案内は確認できません。現地の立入表示と管理者の案内に従ってください。[1][4][10][11]

Deep research

農林水産省・東北農政局の建設史、取水設備の運営資料、郡山市上下水道局の水道史・令和6年度水質年報・2026年度しおりを照合。かんがいを主目的とする疏水と、現在の堀口浄水場に接続する上戸原水系統を区別して記録する。

最終確認:2026-11-04

施設データを詳しく見る

開削着工
1879年

東北農政局は10月27日と記載

創設時の完成
1882年8月

農林水産省の施設史。東北農政局の通水式記録は同年10月1日

創設時の幹線
52km

分水路78kmとの合計で130kmという内訳

別の公式延長表記
127km

農林水産省の世界かんがい施設遺産PDF。130kmとの差の定義不詳

創設時の動員
延べ85万人

1879~1882年の開削工事

開削で造成された水田
約3,000ha

当時の新規造成面積であり現行受益面積ではない

現在の取水口
上戸頭首工

当初の山潟取水口とは別の施設

上戸頭首工の最大送水能力
毎秒約15トン

取水口の能力。安積疏水全線の計画通水能力ではない

水道・上戸系の2024年度取水量
1,447,460m³

郡山市水道の水源別取水実績3.7%。農業用を含む水路総水量ではない

2016年の登録・認定
日本遺産4月/世界かんがい施設遺産11月

それぞれ対象・登録制度が異なる

猪苗代湖からかんがい・上戸原水系統へ

  1. 1

    猪苗代湖

    安積疏水の水源。十六橋水門などの湖水管理施設と関係する。

  2. 2

    上戸頭首工で取水

    戦後の事業によって更新された取水口。創設当時の山潟取水口ではない。

  3. 3

    新安積幹線用水路などへ

    地下水路を含む水路網が猪苗代湖水を郡山方面に運ぶ。

  4. 4

    田子沼付近で分水

    安積疏水・五百川地区と新安積地区に分かれ、農業用水として流れる。

  5. 5

    農地などで利用

    安積原野周辺の水田にかんがい用水を供給。歴史的に水力発電や都市利用にもつながる。

  6. 6

    上戸原水として別途取水

    郡山市水道は新安積幹線用水路を通る上戸系原水を堀口浄水場へ取り入れる。

  7. 7

    堀口浄水場で浄水・供給

    原水は浄水場で処理してから水道水になる。浜路取水系統とは別経路である。

安積疏水の開削・更新・都市用水の年表

  1. 安積疏水の開削に着工

    東北農政局の記録。明治政府による国直轄農業水利事業。

  2. 幹線52km・分水路78kmが完成

    農林水産省の記録。世界かんがい施設遺産PDFは127kmと異なる値を掲げる。

  3. 通水式を挙行

    東北農政局の記録。8月の完成記録とは区別する。

  4. 福島県を経て水利組合へ管理が移る

    東北農政局による管理主体の沿革。後に安積疏水土地改良区が管理。

  5. 郡山市の近代水道が給水開始

    安積疏水の分流などを水源として建設された豊田浄水場を利用。

  6. 国営新安積土地改良事業

    新たな受益地域の整備と上戸頭首工・取水路の更新につながる。

  7. 国営安積疏水土地改良事業

    施設改修・延伸。受益面積7,829haは当該事業の対象値。

  8. 日本遺産ストーリーに認定

    「一本の水路」などの安積開拓関連ストーリー。

  9. 世界かんがい施設遺産に登録

    国宝・国重要文化財としての一括指定を意味しない。

  10. 郡山市が上戸系原水の取水実績・水質を記録

    水源別の水道取水量1,447,460m³を公開。疏水全量ではない。

見学・アクセス情報

安積疏水は多市町村にまたがる水利施設群です。紹介される記念施設や公開された散策空間と、稼働中の頭首工・水門・水路管理区域は別に扱います。

水源・取水側
福島県の猪苗代湖・上戸頭首工周辺。頭首工内部の常設公開条件は未確認
受益地域
郡山市・須賀川市・本宮市など。疏水全体に単一の入口・番地はない
麓山の飛瀑
郡山市が歴史資産として案内する地点。記念施設と稼働水路は区別
十六橋水門
猪苗代湖水位管理に関係する施設。管理区域への自由立入可とは断定しない
上戸頭首工・地下水路
水利施設の管理範囲。常設一般公開案内は確認できない
見学の問い合わせ
管理主体の安積疏水土地改良区などの最新の案内を確認

見学目的でも門・柵・管理区域を越えず、管理者が案内する公開条件と指定経路に従ってください。

現行の上戸原水の水質と取水量の帰属

郡山市の令和6年度水質年報は、堀口浄水場に流入する猪苗代湖原水を浜路系と上戸系に区分し、上戸系は上戸頭首工から新安積幹線用水路を通ると明記しています。2026年度しおりに掲載される2024年度の1,447,460m³は郡山市水道の「猪苗代湖(上戸)」取水実績です。安積疏水全体の取水・通水量ではありません。水質年報の上戸原水の検査結果も、明治期の疏水や他の農業末端水路の水質と同一視しません。[8][9]

よくある質問

安積疏水は何のために造られましたか?

猪苗代湖の水を郡山の安積原野へ引き、水田を開発し、かんがいするために造られました。後に発電・都市用水にも活用されています。

いつ完成しましたか?

農林水産省は1882年8月完成、東北農政局は同年10月1日の通水式と記録しています。

全長は130kmですか、127kmですか?

農林水産省の歴史紹介は幹線52km・分水路78kmの合計130km、同省の世界かんがい施設遺産資料は127kmです。計上範囲の違いは確認できないため、いずれも創設時の資料値として併記します。

現在の取水口は明治時代のままですか?

いいえ。創設時は山潟取水口で、戦後の改修により現在の上戸頭首工へ変わり、取水路も変更されました。

安積疏水の水は飲み水にも使われますか?

はい。郡山市の令和6年度水質年報は、上戸頭首工から新安積幹線用水路を通る原水を堀口浄水場で利用すると説明しています。疏水内で飲用処理するわけではありません。

毎秒約15トンは疏水全線の送水能力ですか?

違います。福島県土地改良事業団体連合会が説明する上戸頭首工の取水設備の最大能力です。全線の設計流量は確認できません。

2024年度の1,447,460m³とは何の数字ですか?

郡山市水道事業が猪苗代湖・上戸系から取水した年間実績で、農業用を含む疏水全体の年間通水量ではありません。

十六橋水門はどんな役割ですか?

猪苗代湖の水位と疏水の水利用に関係する歴史的な水門です。上戸頭首工という現在の取水口とは別の施設です。

疏水全体が国宝や重要文化財ですか?

いいえ。2016年の日本遺産ストーリー認定・世界かんがい施設遺産登録と、個別建造物の文化財指定は制度も対象も異なります。

水路や取水口に自由に入れますか?

稼働中の頭首工・水門・地下水路内部の常設一般公開は確認できません。周辺の案内地点も管理者の立入規制に従ってください。

安積疏水を理解するための要点

本ページでは、安積疏水を福島県・郡山市・須賀川市・本宮市ほか(取水側は猪苗代町)の疏水施設として記録しています。以下は掲載資料から確認できる基本情報です。

記録上の所在地
猪苗代湖の上戸頭首工から郡山市周辺の水路網に広がる線状施設。全線に共通する単一の番地はない
施設種別
疏水施設
年代・供用状況
1879年着工、1882年8月完成(農林水産省)。東北農政局が記す通水式は1882年10月1日
構造・形式
頭首工・開水路・分水路・隧道・水門を含む水路網。当初は幹線52km・分水路78km、郡山市資料には37隧道
能力・規模
全水路の現行通水能力は不詳。上戸頭首工の最大取水能力は毎秒約15トン(頭首工単独の値)。2024年度の郡山市水道・上戸系取水量は1,447,460m³(疏水全体の水量ではない)
文化財等
2016年4月に猪苗代湖・安積疏水・安積開拓の物語が日本遺産認定、同年11月に安積疏水が世界かんがい施設遺産登録。麓山の飛瀑の文化財登録は別の指定

施設の機能と地域での役割

水路・隧道・水路橋などは、水を運ぶ経路や関連設備です。用途は施設によって異なるため、上水道だけに限定せず、送水先や地域での役割を本文で確認してください。 この一般的な役割と、上記の調査本文に記載したこの施設固有の歴史・構造を分けてご覧ください。

見学・現地確認について

掲載上の見学情報は「麓山の飛瀑などの紹介地点と、上戸頭首工・水門・地下水路の管理区域を区別。水路施設内部の常設一般公開案内は確認できない」です。公開日、受付方法、見学可能範囲は変更されることがあります。訪問前に管理者や自治体の最新案内を確認し、現地では指定された見学経路に従ってください。

掲載内容はページ末尾の出典・参考資料11件を基に整理しています。資料間で表記が異なる場合は、自治体・管理者の案内を優先してください。

所在地マップ

猪苗代湖の上戸頭首工から郡山市周辺の水路網に広がる線状施設。全線に共通する単一の番地はない

地図を大きく見る ↗

地図を読み込むとGoogle マップへ通信します。

地図は公開住所をもとに検索表示しています。施設の管理区域には立ち入らないでください。

地図検索:公開住所による地図検索 ↗

関連タグ

#安積疏水#疏水施設#猪苗代湖#郡山市#安積原野#上戸頭首工#田子沼分水工#新安積幹線用水路#堀口浄水場#十六橋水門#世界かんがい施設遺産#日本遺産#近代土木#農業用水#水道原水#現存

出典・参考資料

  1. 1農林水産省「安積疏水(福島県)」(1879年着工・1882年8月完成・当初の幹線52kmと分水78km・近代化・文化遺産)↗本文に戻る ↑
  2. 2東北農政局「安積疏水物語」(1879年10月27日着工・1882年10月1日通水式・管理主体・農業と水道の利用)↗本文に戻る ↑
  3. 3郡山市「安積疏水」(創設時の工事・37のトンネル・麓山の飛瀑)↗本文に戻る ↑
  4. 4農林水産省「世界かんがい施設遺産 安積疏水」(127km表記・十六橋水門・上戸頭首工・多目的利用)↗本文に戻る ↑
  5. 5福島県土地改良事業団体連合会「安積疏水・上戸頭首工」(取水口移設・毎秒約15トン・田子沼分水)↗本文に戻る ↑
  6. 6東北農政局「安積疏水 国営事業完了地区」(1970~1982年度の受益7,829ha・主要工事の区分)↗本文に戻る ↑
  7. 7郡山市上下水道局「郡山市水道のあゆみ(江戸~明治)」(1907年の水源案・1912年の豊田浄水場)↗本文に戻る ↑
  8. 8郡山市上下水道局「2026年度版 上下水道のしおり」25頁(水源経路・2024年度の上戸系取水量)↗本文に戻る ↑
  9. 9郡山市上下水道局「令和6年度 水質年報」21頁(堀口浄水場の浜路・上戸の別系統と上戸原水の検査)↗本文に戻る ↑
  10. 10郡山市「十六橋水門」(猪苗代湖の水位調整と疏水の取水)↗本文に戻る ↑
  11. 11郡山市「麓山の飛瀑」(安積疏水を記念した施設と独立した文化財登録)↗本文に戻る ↑

年代・出典の扱いと現役施設を確認するときの注意はアーカイブの読み方・見学ガイドにまとめています。